19世紀初頭のイギリスを舞台に、五つの旧家が関わる、5世代にわたる遺産を巡る遺恨に巻き込まれた少年の運命は・・・。
分量的には『ザ・スタンド』と同じぐらいだが、読み通すには遥かに大きな労力を強いられる超大作。遺産を巡る謎、家族を巡る謎を縦糸に、その時代のあらゆる階層の人々の生活ぶりや社会の様子の丹念な描写を横糸に、いつ終わるとも知れない物語は続く。
いささか長すぎること、必要以上にじらし過ぎること、複数の語り手の存在が違和感を感じさせることなどいくつもの欠点はあるものの、波乱万丈という言葉がふさわしい、読むことの喜びを感じさせてくれる娯楽大作である。
しかし21世紀の現在、この作品をじっくり読める時間的、精神的、体力的余裕を持っている人がどれぐらいいるだろうか?メモを取りながらでもない限り、一度読んだだけで、この複雑な人間関係を完全に理解するのは不可能だろう。それに凝った構成や仕掛けを、一度で味わいつくすことも無理だ。
日々の忙しい生活の中で、手っ取り早い娯楽や気分転換として読書を楽しんでいる人は手を出さないほうが無難かも。老後の楽しみに取っておこう。
五輪の薔薇〈1〉ハヤカワ文庫NV