アメコミの映画化作品には大雑把に分けて3つのタイプがあると思う。
1.普通の娯楽映画。有名/人気役者を多数起用し、予算もばっちり。でも絵的には残念な場合が多い。
2.アメコミ映画でないと予算が取れないので、とりあえず外側はアメコミだけど中身は製作者の想いがぎっしり。一般的な評価は高くても原作ファンとしては複雑。
3・対象となる作品、またはそのジャンルに対する深い愛情と造詣を持ち、映像に対するこだわりが強い。しかし時に愛情が暴走し、観客がおいてけぼりにされる場合も。
どの作品がどれに当てはまるとか、どれが良いなどいちいち言わないけど、どれも一長一短ありでなかなかうまくいかないもの。
で、この「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」、基本的には3のパターンながら、ありがちな落とし穴を避けることに成功した大傑作。とにかく映像的には一部の隙もないほどの完成度(あまりに濃いので音を上げる人もいるかも)。なおかつ映像に対するこだわりのせいでストーリーがないがしろにされるということもなく、キャラクター造形も深みがあり、コミカルな楽しさにも溢れ、極力引いた感じのアクション・シーンも・・・とにかく文句なし。
普通素晴らしい映像を撮る監督は、それに溺れる傾向というか、「オレってすごくね?」的ないやらしさが感じられることが多いのに、この映画の場合はそれが全くないのは監督の人柄故か(もちろん人柄なんて知らんけど、そうとしか思えない)。「トロールの市場」のシーンなんてアメコミだけでなく、過去の全てのファンタジー系の映画制作スタッフが歯噛みして悔しがるような素晴らしさ。もちろんここだけではなく、映画全般のクリーチャー(歯の妖精♡、フラゼッタの絵から抜け出してきたようなウィンク最高)やガジェット(あの眼鏡!)、美術全体の完成度の高さは異常。そういうところばかりじゃなく、飛行機が飛んでるだけの普通の場面(横っ腹!)もかっこよくて。とても一度や二度見たぐらいでは堪能できないので、DVD出たら絶対買わねば。
実は「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」が(というか前作も)ギルレモ・デル・トロ監督だということを最近まで知らなくて、あわてて前作を予習し、劇場にかけつけたわけですが、本当に大きなスクリーンで見れてよかった。できればもう一度くらいは行きたいところ。ああでも、もう今年はこれ以上の映画には出会えないことがほぼ確実というのもさびしいな。
王子様があの元ブロスの片割れって・・・・