深夜、少女がなぜ一人で人里離れた車道に?
マイケルは不思議に思いながらも、帰宅途中で出会った少女を車に乗せて家まで送り届けることにした。
案内されたのは山奥の見知らぬ道に、見知らぬ館。
「わたしを見つけて」その言葉だけを残し、少女は館へと姿を消す。彼も後に続くが、中には誰もいない。にもかかわらず数え歌だけが不気味に木霊し…。
ブラム・ストーカー賞受賞作家によるホラー・サスペンス (ランダムハウス講談社HPより)
美男美女でキャリア的にも成功を収めているラブラブの夫婦が主人公、というだけでも、(クーンツ・ファンならともかく)キング・ファンには「やれやれ」という感じだし、敵の吸血鬼ならぬ吸「思い出」鬼の設定はユニークなのに、それを生かしきる筆力が無く、結局は「愛が勝つ」的な、安物くさいホラーにありがちな底の浅い展開/結末でがっかり。
最悪なのはマイケルが動き出すまでに暇がかかりすぎること。普通の人は、よほど切羽詰らないと魔物とは対決なんてできないものと作者が考えているのなら、その間を「読ませる」努力がもっと必要だと思う。それにまあユニークではあるといっても、子供の頃の幸福な思い出が無くなれば、その人がいやーな奴に変わって(奥さんの豹変ぶりには大笑い)しまうというあたりには、「持てるもの」の傲慢さなんかも感じたり。
どんなしがらみがあるのかは知らないけれど、この程度の作品に「『ローズマリーの赤ちゃん』に匹敵するスーパー・ナチュラル・ホラーの傑作」なんて言ってるようでは、サイ・キング、あなたの見識が疑われますよ。
闇に棲む少女クリストファー・ゴールデン 鳥見 真生