ゴシック小説の登場以来200年のホラーの歴史は、「恐怖・脅威にさらされた人間」=「犠牲者」という表象をとおして、個人・身体・社会生活に対する権力作用を浮き彫りにした──。恐怖と快楽、欲望と抑圧の理論的臨界点をさぐる。(表紙より)
単純にまとめてしまえば「ホラーは世につれ」ということ。意図的である/無いにかかわらず、ホラーはその時代の人々が抱えている不安を反映しやすい(しやすいというだけで、それを描いているとは限らない)ジャンルだと思うので、本書のような主張はまあ妥当というか、精神分析的なものやジェンダー論を全面に出したものなどよりはずっと共感できた。
キングについても数ページを割いているものの、特に目新しい観点は無く。全体に文章が硬くて読みにくいし、実質200ページにも満たない本に2600円は高すぎ。お勧め度低し。
恐怖の臨界―ホラーの政治学マーク ジャンコヴィック Mark Jancovich 遠藤 徹