キングのコメント 「サスペンス小説の世界にはもう何も新しいものがないと思っていたとき、何とも危険な一匹の蜘蛛があらわれた。その名は「the Straw Men」。この作品は異彩を放ち、すさまじいまでに不気味だ」
「わたしたちは生きている」死んだはずの父から手紙を受け取った元CIAの男は、両親の行方を暗示する古いビデオを発見し、それを手がかりに捜索をはじめる。一方、愛娘を連続誘拐魔に殺された元刑事は、再び姿を現した犯人を捕らえるため違法の捜査に復讐の炎を燃やす。やがて、二人の男の必死の追跡は、億万長者だけが進入を許可される謎の共同体<ザ・ホールズ>で交わるが……。
人類の転覆さえ視野にいれたあまりにグロテスクな陰謀が暴かれる!(裏表紙より)
うーん、微妙。前半のビデオから両親の死の謎を追うあたりは引き込まれるものの、後半は昔のクーンツを思わせるトンデモな展開に。ミステリー・プロパーの人には絶対に向かないと思われ。(というか、生真面目な人は手を出すべからず - 「このミス」の「バカミス」に選ばれるような作品といえば雰囲気が伝わるかな?) やはり大風呂敷の広げかたがSFの人かなという感じ。
「キングファンとして読んでおくべきか?」と聞かれたら、「その必要は全くない」と答えるものの、個人的には続巻(本書は三部作の一作目だそう)が出たらまた買ってしまうかも。下手なんだけどカルト的な魅力がなきにしもあらずなので。
そうそう、腰巻の「スティーヴン・キングが恐怖に震えた驚愕のラスト!」というのは真っ赤なウソ。どちらかといえば最後は静謐な感じなので、くれぐれもこれに釣られることのないように。
私はあまり訳の良し悪しなど気にしないほうだけど、本書は非常に読み辛かった。訳者は嶋田洋一氏で、紹介記事を見ると主な訳書はダン・シモンズの『夜明けのエントロピー』『鋼』『雪嵐』、ダニエレブスキーの『紙葉の家』とある。これらは全部読んでいるけど、どれも特に問題は感じなかったので、本書は原文がよっぽど悪いんだろうか?
死影マイケル マーシャル Michael Marshall 嶋田 洋一