偉大な親を持つ子は幸福なのか不幸なのか? もちろん両面あるだろうが親と同じ道を歩むと決めたが最後、常に親と比較され、成功しても「七光りだろう」と言われ、親の影響から離れて独自のスタイルを築き、しかもそれがちゃんと評価されるようになるのは並大抵のことではないのだろう。
ジョー・ヒルも当初は「キングの息子」であることを隠していたぐらいだから、やはり相当葛藤があったはず。しかしカミングアウトし、父との共作も経て、ついにこの作品ではあとがきにもあるように完全な「スティーヴン・キング・トリビュート」であり、なおかつキングの影響によって生まれたモダンホラー・ブーム全体へのトリビュートでもあり、現在は停滞しているそのジャンルの久々の大ヒットでもあるのだ。
本作の素晴らしさを例えて言うなら、長島一茂が天覧試合でホームランを打ったような、ダンカン・ジョーンズが『地球に落ちてきた男』のリメイクを作って大ヒットさせるような、ONE OK ROCKのTakaが「おふくろさん パート2」を歌うような、ポール・ウエラーの息子がオリコンで一位を取るようなもの・・・・だいぶ違うのも交じってるような気もするけどまあそんな感じ。
ジェイク(ニューヨーク!)、チャーリー(本名はシャーリーン!)、カーモディなど馴染みのある名前でニヤニヤさせられるけど、なんといっても極め付きはダビサ。お母ちゃんの名前まで使うとは!
思えばわたしは生まれてからずっと、父を追って父の裏道をバイクで走っていたのかもしれない。そのことを悔いてはいない。
謝辞のこの言葉に涙。父親への愛と尊敬、その仕事に対する最大級の評価が詰まったこの作品は、キングにとってはどんな賞を貰うよりも嬉しいものだったに違いない。というか夫婦揃って号泣してるよね絶対。
父親キングとの関連ばかりで語ってきたけれど、もちろんそんなことを抜きにしても翻訳ホラー/ダーク・ファンタジー系がお好きな方には絶対お勧め。ぜひご一読を。
それにしてもこの写真、お父ちゃんに似すぎやろ!