前に読んだ『回転する世界の静止点』は初期の作品集だったけど、本書は遺作。冷徹さがスプラスティックな過剰さを含んだ悪意にまで昇華しているというか、とにかくコワイ。世間的な建て前や欺瞞など知ったことか、じゃなくわざとそこを突く意地悪さ炸裂。根性のダークさではキューブリックといい勝負かも。彼女の前ではバラードが可愛く思えてくる。
あとがきにも「いくら小説でも書いていいことと悪いことがある」みたいなことが書いてあったけど、介護施設で200歳を超えて生き続ける老女を描いた「見えない最後」に特にそれを感じた。超高齢化社会へまっしぐらの日本ではなおさらしゃれにならん話だけど、一面の真理を含んでいるだけに素晴らしいというべきか、たちが悪いというべきか・・・。
『回転する世界の静止点』の感想で「また読みたい/読まねばと思う作家が増えた」と書いたけど、それは撤回。正直もうあんまり読みたくない(笑)。とりあえず、こんな作家が存在したということを知っただけで良しとしよう。
世界の終わりの物語