何はともあれ『アンダー・ザ・ドーム』、あれ、ドームじゃないよね・・・でも凄い飛び道具だなと。過去の作品では主人公たちが孤立する状況を丹念に描いたものも少なくない(極め付きは『クージョ』)けど、これはいきなりドン!ですから。昔はいかに「不信の停止」に持っていくか、みたいなことを書いてたのに、もうこまかいことはいいんだよなところが痛快。その下で繰り広げられるのは、ファンにはお馴染みというか、正直またですか的な展開なんだけど、それでも面白い。読み始めてしばらくは、今回は冗長さが2割増し?今までと若干ノリが違うような?と感じた。でも途中から、もしかしてこれってTVドラマのテンポでは、核になるストーリーだけなら10回以下で終わりそうなのに、様々なエピソードを押し込んで24話に膨らませるような、と思うようになった。だから徹夜で読むより、1日1章のようなペースで読むのが正しいのではとも。
キングは旺盛な創作意欲(執筆習慣?)と形式的な創意工夫や意図的、あるいは自然な変化によって長い間読者を飽きさせないできた。でもどう贔屓したってピークはとっくに過ぎている。作品によっては、過去に運動経験のあるお父さんが子供の運動会のリレーに出て見事にすっ転ぶ、みたいな調子で読者を不安にさせるものもあった。でもこの『ドーム』は、転ぶ原因である頭の中のイメージと現実の衰えた肉体とのギャップは無く、現在の自分に出来ることの認識がちゃんとあるから、読む方も不安にならない、そんな作品なのではないかな。だから「アクセル踏みっぱなし」と言ったところで、スポーツカーなどではなく年季の入った大型バン、しかも荷物満載で思いっきり踏んだところで下り坂じゃないと100キロ超えませんといったところだし、過去に3部からなる超大作の劇場映画、それも3部だけでは足りなくてスピンオフが勝手に発展してしまうような濃密さを持った作品を撮ってた人がTVに転向ですか的なさびしさ(TVドラマ好きな方にはごめんなさい)もあるけど、それでもこんなに娯楽度の高い作品を書いてくれたということが嬉しいわけで。こちらの勝手な思い込みを裏切ってくれるから、まだまだキングはやめられない。
それと巻頭の登場人物紹介のとんでもない量にビビる必要は無いですよ、あれに頼らなくてもちゃんと覚えられるから。それだけでもたいしたもんだねえ。
他は・・・まあいいや。
期間 : 2011年05月
読了数 : 16 冊
夏目 漱石 / 新潮社 (1948-10)
カレル・チャペック / 岩波書店 (2003-03-14)
橋本 治 , 悳 俊彦 / 新潮社 (1995-07)
山田 風太郎 / 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-11-25)
末次 由紀 / 講談社 (2009-12-11)
山田 風太郎 / 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-11-25)
アーサー・C・クラーク , スティーヴン・バクスター / 早川書房 (2010-07-30)
坂口 安吾 / 講談社 (1989-04-03)
青桐ナツ / マッグガーデン (2010-01-09)
河合 隼雄 / 岩波書店 (1992-02-20)
スティーヴン・キング / 文藝春秋 (2011-04-28)
スティーヴン・キング / 文藝春秋 (2011-04-28)
手塚 治虫 / 秋田書店 (1972-06)
手塚 治虫 / 秋田書店 (1972-01)
手塚 治虫 / 秋田書店 (1971-11)
手塚 治虫 / 秋田書店 (1974-09)