『傀儡后』で日本SF大賞を受賞した、牧野修の短編集。
はじめの3篇ほどは、ひどく独りよがりな印象を受け、これは最後まで読めないかもと心配していたが、「インキュバス言語」あたりからノリが掴めてきて、後半はかなり楽しんで読んだ。
夢を見ない男の話。天使に、世界を再構築できる(中年男性の性的妄想を主体として構成された)言語システムを授かった男の話。幸福になれるドラッグの話。荒下黒瓜(あれしたくろうり)なる人物も登場する、演歌と神秘主義の話。プラスティック化された言語情報を人形にした、動くテキスト「ラングドール」の話などなど。
全体の雰囲気としては、筒井康隆のスプラスティックな短編を、さらに病的にしたような感じ。「めちゃくちゃやな」と思わせておいて、最後の「付記・ロマンス法について」では、作家としての矜持をちらりとのぞかせたりするところがにくい。
楽園の知恵...ハヤカワSFシリーズ...