絵が凄いのは見る前から分かっていたので、問題はストーリーだと思っていた。現代の科学技術のルーツを蒸気機関時代の英国に求め、人を幸福にする/災いをもたらすというテクノロジーの両義性を、3代の親子の葛藤を主軸として描き、アクション満載、娯楽度満点の大作に仕上がっている。大友が大好きなちょっとオタクなお父さんも、安心して家族連れでで楽しめる。その分「アキラ」的な世界を期待した人には肩すかしかも。
頭に「絵が凄いのは見る前から分かっていた」と書いたが、この映画の絵の素晴らしさはそんな予想を遥かに超えていた。オリンピックや大きなスポーツの大会を見ているときに受ける、不可能のワクを大きく押し広げるような、人間の身体、精神能力の素晴らしさに対する感動、それと同種のものを感じた。人間にここまでのことができるのかという驚き。9年もの歳月をかけて、自分のビジョンを実現した大友にひれ伏すしかない。
ビデオ/DVDで見たらええわと思っている方、この常軌を逸した細密描写を100%楽しめるのは映画館の大きなスクリーンだけなので、絶対劇場に足を運んだ方がいい。ラブシーンよりもボルトとナットを描かせたほうがセクシーと言われた大友の、メカの動きを大画面で存分に堪能すべき。
この作品、キャラクターの魅力に欠けるという声をよく聞く。それは背景描写は格段に進歩しているのに、キャラクター造形は20年前とあまり変わっていないところから来るギャップのせいかもしれない。バランスが悪いのだ。だからといって、あまり人間をリアルに描くのもどうかと思うし。フルCGの作品も含め、人間をどう描くかがアニメーションの今後の問題かな。
レイたちの今後の姿を描いた、エンドクレジットのバックの絵を見て、「続編が見たい」と思った方も多かっただろう。それがなんと、正式に続編の製作が決まったらしい。今度は2,3年で完成させるそうだが・・・・どうなることやら。