ロックとホラーは相性が良い。ブラック・サバスからマイケミまで、多くのロック・バンドがホラー的なイメージを用いているし、ロブ・ゾンビのように自らホラー映画を撮ってしまうような人さえいる。小説のほうでも『クリスティーン』や『いかしたバンドのいる街で』などのキング作品では、ロックが大々的に、効果的に用いられている。しかし、ロック・ミュージシャンが主役を務めるホラー小説というのはあまり無かったのではないだろうか。
キングの息子、ジョー・ヒルの長編デビュー作である本書では、父親の薫陶の成果(親の因果?)というべきか、ロックとホラーの双方に対する愛情に溢れた素晴らしい作品となっている。キングの作品以上にAC/DCが似合うというだけでも嬉しいし、ネットオークションで手に入れた幽霊が(いろんな意味で)いやらしくって最高で。クーンツほどスピーディではなく、キングほどまったりしていないテンポもいい感じ。展開にはそれほど新味はない、というかスタンダードなラインから外れることがないのに読者を飽きさせない筆力はなかなかのもの。クライマックスのXXとの対決シーンなんて、ホラー小説でしか描けないOOとの決着で、絵的にも抜群。文句をつけるとしたら、「なんでこのタイトルでオジー・オズボーンみたいなおっさんが主役やねん!」とつっこみを入れたくなることぐらいかな。
なんだかんだ言っても「しょせんは七光だろう」なんて見くびっていたこと、本当にゴメン。同じく小学館から出る予定の短編集が今から楽しみ。