『HOOT』に続く、ハイアセンの若者向け第二弾。まともな人物は一人もいないと思わせるほどユニークなキャラクターたち、あふれるユーモア、自然を破壊する愚者VSどんなことをしてもそれを妨害しようとする者。ハイアセンの小説はほとんどこのパターンだけど、この作品もいつものパターンながら最高に面白い。若者向けということもあって、落とし所も決まりきっているにもかかわらず、ハラハラ、もやもやさせながらそこまでもっていく構成力、というか腕力もおみごと。
若者は大人が口先だけで言っていることなんて絶対に信じないから、若者向けの作品を書く作家は自分の信念を問われることになったりするわけですが、そこはハイアセンだから全く心配は無し。大自然の素晴らしさを「グリーン・フラッシュ」現象を象徴的に用いて描き、大人社会のでたらめさや闇部、おまけに得意のディズニー批判まで盛り込むサービス(?)ぶり。作品の内容に対して、作家が求められるものをこれほど完璧に満たした小説も稀だと思う。主人公が何かを守るために戦うならば、守られるものの貴重さ、素晴らしさが納得できるように描かれる必要があるわけですが、「そんなのあたりまえ」と思うなかれ。それができていない小説や映画のいかに多いことか・・・
感想文を書くための本を探している学生諸君、悪いことは言わんからこれを読みなさい。つまらん課題図書なんか捨ててしまえ。
大人の読者にとっては、「グリーンピース」等の自然保護活動のファナティツクさを理解するための一助になのる・・・・かも。
「グリーン・フラッシュ」のことは本書ではじめて知りましたが、
ここや
ここで写真が見れます。この現象を見たら「幸せになる」とか「真実の愛に目覚める」とか言われているそうで。
あんまり関係ないけど、これを読んでいてクリストの
Surrounded Islandsを思い出した。マイアミつながり、色も近いということで。
フラッシュカール ハイアセン Carl Hiaasen 千葉 茂樹