田中一村展に行って来た。彼の展覧会へ行ったのはこれで三度目、もう大好きなのだ。一村はあまりにも絵に対してストイック過ぎたため、画壇とも折り合わず、生涯独身で、全てを絵のためだけに捧げて生きた。奄美時代の絵が有名だが、そこでは紬職人として働き、金が貯まると仕事を辞めて絵を描くという暮らしをしていたらしい。
今回私が最も気に入った作品は、「四季花譜図」と題されたふすま絵。以前はどの絵がどの季節を表すのかもろくに分からなかったが、園芸に興味を持つようになった今では、花の種類も半分程度は判るようになった。花や実は色が使われているが、葉や茎は水墨画のように黒の濃淡だけで表現されているのが素晴らしく、この作品だけでも1時間は飽きずに眺められそうだった。
『グリーン・マイル』ではないが、まさに一村の人生は「祝福と呪いは紙一重」という感じだ。せめて彼が絵を描いている間だけは、幸福であったことを祈るばかりだ。一村に限らず、様々な分野の「巨人」たちが葛藤の末に生み出したもののおかげで、我々凡人は豊に暮らすことができる。小市民的幸福を追求できるのは凡人の特権、感謝の気持ちを忘れずせいぜい楽しませていただこう。
そういえば、いつも展覧会で必ず一人はいる「うわー、細かいねー」と感心するおばちゃんが、今日はいなかった。大阪ではなく神戸だったからかな?