神経疾患をもつ患者の研究は、臨床神経学の範囲をはるかに超えて、人文学や哲学にとっても、ひょっとすると美術や芸術にとっても意味がある
自分の母親を偽者だと思うカプグラ症候群、失われた指の感覚を顔面に感じたり、幻の手が硬直していると感じる幻肢、数字を見て色を感じる共感覚などの奇妙な症例から、芸術や哲学から、自己、笑い、赤面、言語の発展など様々な問題に迫った一冊。
芸術家や詩人、小説家には共感覚の持ち主が通常の七倍も多いという事実から、それがメタファーを作る能力の高さではないかと考え、そこから言語の進化にまで発展する第4章は、最高に刺激的。
わかりやすくソフトな中にも、時々感じられるやや傲慢な一面や、反応に困ってしまうようなジョークが混ざった語り口も魅力。「トップランナー」好きな人向け。