あの神話上の生き物であるミノタウロスが、現代のアメリカで普通に暮らしている話。トレーラーハウスに住み、ステーキハウスの厨房で働き、車いじりが得意。5千年も生きている間に獣性はすっかり後退し、いまではすっかりおとなしくなってしまっている。話すのが苦手で自分の気持ちを上手く伝えられない。
厨房で働く場面など魅力的なところもあるんだけど、全体的にはなんだか釈然としない。「強くて逞しい男らしさ」という足場を失ってさまよう男のメタファーとして読めばいいのかもしれないけれど、どうももの足りない。終盤のストーリー展開にも納得いかないし。
やっぱり自分は、妻を虐待するサイコな警察官が異世界でミノタウロスに変身するような作品を書く作家のファンだからかな。つまり神話世界のキャラクターを現実世界にひきずりおろすよりも、神話性を保った物語を書くほうがずっと困難だと思うのだ。
それとファンシーな感じの表紙は、内容と合ってなくて誤解を生みそうなので良くないと思う(それを狙ってるのか?)。