ギブスン特集第二弾。『クローム襲撃』は意外とサイバーパンク度が低かったので素直に楽しめたけれど、こちらはもう「純度100%」、やっぱり今読むと設定も展開も平凡に感じられ、ちょっとつらいものがあった。逆に言うと、ギブスン的世界がそれだけ普遍的なものになった証拠でもあるのだけれど。
今回思ったのは、ネガティブさのあまり感じられない作品だということ。普通このような世界観の作品だったら、もっとダークな傾向になりそうなものなのに、なぜか一種の爽やかさのようなものがある。それは登場人物たちが、境遇はどうあれ、したたかに生きていることからくるように思える。自分を「解放」するためにケイスやモリイを使ったAI「冬寂(ウインター・ミュート=なんて素晴らしい名前!)」にしても、人類に敵対する気などなさそうで、これといった悪役が存在しないことも、そう感じる一因かもしれない。
この作品、映画化されなくて良かったとつくづく思う。だってサイバー・スペースのシーンなんて、ホラー映画のモンスターと同じで、絶対安物臭くなっていたはずだから。(そういえば「JM」なんて映画があったような・・・。ロンゴはあれで値打ちを下げたな。)ただ動くモリイは見てみたかった。
ニューロマンサー